猫のパックン

ハーバード大学卒業のアメリカ人芸人タレントさんではない、猫の名前だ。学生時代に住んでいた学生アパートの大家さんとこの猫の名前だ。茶色と白のぶち猫で、なかなかふてぶてしい面構えなのだが、なつくとドスの効いたでっかいゴロゴロ音を鳴らして「ここ撫でろ~」「次はここ撫でれ~」と顎やら頭を突き出してくる猫好きにとってはたまらない愛嬌ものだった。大家さんのお宅の横にわたしたち学生が住むアパートがあった。
猫の方もよく分かっていて、猫嫌いもしくは自分に興味がない住人のところはスルーしていく。アパートは5階建てでワンフロアー6室、30戸の小さなものだった。猫のパックンは1階2階はベランダに入り込んで部屋の住人がまどを開けてくれるのを待っている。3階から上階は通路で昼寝をしていたりぶらついている。
そうして玄関から入って玄関から帰っていく。年2度お中元とお歳暮の時期に、アパートの住人全員の郵便受けに、大家さんとパックンの連名で「いつもお世話になり、ありがとうございます」とタオルセットや食器洗い、洗濯洗剤が入っている。
わたしは2階の奥から2番目の部屋に住んでいたのだが、パックンがどうやって帰るのか何度かベランダに立って見送ったことがあるのだけど、お隣り(一番奥)のベランダの防火壁の下のすき間を器用に潜り抜け、エアコンの室外機の上から幅20cmくらいだったと思う手すりに飛び移り、アパートの敷地に植えてある大きなかえでの木にピョンと飛び移って、最後はアパートの敷地を囲むブロック塀に飛び移るのだった。なかなか俊敏で運動神経のいい猫なんだなあと、すごく感心したのだった。